個人の債務整理
自己破産
 自己破産は、多重債務を負った個人が自分の収入や財産で債務を支払うことができなくなった場合に、裁判所に破産を申し立て、資産をすべて提供して債権者に配当、清算して、破綻した生活を立て直すことを目的としています。

 借金の支払いを免除してもらう(免責といいます)には、裁判所から支払い不能な破産状態であり、負債の原因がギャンブルや不相応な浪費などの免責不許可事由ではないと認められ、免責許可決定を得る必要があります。免責許可決定が確定すると、税金や罰金、故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、夫婦間の婚姻費用分担請求権、子に関する養育費請求権等の非免責債権等の一部の例外を除いて支払う責任がなくなります。

(破産の手続)
 自己破産は、つぎのような流れで手続が進みます。
  • 申立ての書類を整え、裁判所に提出する
  • 裁判所が破産状態にあるかを判断し、破産手続が開始される
  • 裁判所が債権者などの意見を聴き、免責を決定する
 破産者の資産が多い場合や免責について調査の必要がある場合は、裁判所が破産管財人を選任します。これを管財型といい、破産管財人が破産者の財産の調査、換価、債権者への配当といった破産の手続きを進めます。
 破産者の財産が少なく、これをお金に換えても破産手続きの費用にも足りないことが明らかな場合は、裁判所は破産管財人を選任しないで破産手続き開始決定と同時に破産手続きを終了させる決定をします。これを同時廃止といって、破産者の財産を管理したり財産の換価は行われず、破産手続開始と同時に破産手続が終了します。

(資産について)
 破産すると、現金や預金、不動産や自動車、生命保険の解約返戻金などの資産は、自由財産を除き債務の弁済に充てられます。

 自由財産とは破産者に確保が認められている資産で、原則として99万円までは保有が認められます。裁判所が生活に必要不可欠と判断すれば、99万円を超える額についても保有が認められます。また、計上すべき資産には退職金も含まれますが、申立時の見込額の8分の1(神戸地裁の場合)ですみます。

 なお、破産ではなく小規模個人再生を利用する場合は、住宅ローンを支払って自宅を手放さずにすむ場合もありますが、ベストな解決策は債務の総額や保有資産などの条件によって異なりますので、弁護士にご相談ください。

(資格制限)
 自己破産した場合でも勤めている会社を辞める必要はありません。教員や看護師など一般の公務員の場合も仕事を続けられます。一方で、破産手続中は、宅地建物取引主任者や生命保険募集人、警備員等の特定の資格を必要とする職業、後見人、取締役等に就くことは制限されます。なお、免責許可決定が確定すると、資格制限は消滅します。

 破産手続開始時には官報に破産の事実が記載されますが、住民票や戸籍には記載されません。破産を理由に、選挙権がなくなったり、賃貸住宅から追い出されたりといった不当な扱いを受けることはまずありません。年金受給者は、年金を打ち切られることはありません。
個人再生
 多重債務を負った個人が債務整理をして、生活を立て直す方法として個人再生があります。個人再生手続は、継続的に収入を得られる見込みはあるが、多額の負債を抱えているため、約定どおりの債務を返済していくことが困難な人で、破産を生じるおそれのある人が対象なります。負債を生じた主な原因がギャンブルや浪費行為であった場合、自己破産はできませんが、個人再生は利用可能です。

 個人再生は、裁判所の関与のもとで、全債権者に対する債務額を一定の条件にしたがって減額してもらい、減額後の債務を原則3年(最長5年)で分割返済していく手続です。自己破産と異なり、債務が免除されるわけではありませんが、住宅ローン以外の借金は大幅に減額できます。

 住宅ローンが残っている場合には、住宅ローンを払い続けることによって、自宅の所有が認められる場合もあります。これを住宅資金特別条項といいます。住宅資金特別条項を利用するには、自分名義の住宅を所有していること、住宅を自宅として利用していること、住宅ローンを担保するための抵当権がついていること、住宅ローン以外の借金を担保するための抵当権等がついていないなどの条件が必要ですので、弁護士にご相談ください。

 負債が生じた主な原因がギャンブルや浪費行為であった場合、自己破産はできませんが、個人再生は利用可能です。

 また、相当額の住宅ローンが残っている自宅がある場合には、住宅ローンを払い続けることによって、自宅の所有が認められる場合もあります。

(資格制限)
 自己破産の場合、破産手続中は特定の職業には就けないなどの制限がありますが、個人再生の場合はそうした制限はありません。また、現在勤めている会社を辞める必要はありません。事業をされている方は事業を継続できます。

(個人再生の手続と条件)
 個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生の2つの手続があります。それぞれの手続きにおける条件は次のとおりです。

A:小規模個人再生手続

主に、個人商店主や小規模の事業を営んでいる人を対象とした手続です。

・借金などの総額(住宅ローン、罰金等の額を除く)が5000万円以下であること
・将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること

B:給与所得者等再生手続

主に、サラリーマンを対象とした手続です。

・借金などの総額(住宅ローン、罰金等の額を除く)が5000万円以下であること
・将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
・給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で、その額の変動の幅が小さいと見込まれる者

(再生計画案の最低弁済額の要件)
 最低弁済額は、借金などの総額(住宅ローンを除く)に応じて異なります。目安としては、次の区分により求めることができます。なお、住宅資金特別条項を利用した場合、下記の最低弁済額とは別に住宅ローンの支払いが必要となります。
 小規模個人再生手続の場合①②、給与所得者等再生手続の場合①②③により算出される金額のうち、もっとも多い金額が弁済額となります。

①負債総額からの算出

<債務額>             <最低弁済額>
100万円未満の人・・・・・・・・・・・・・負債総額全部
100万円を超え500万円までの人・・・・・100万円
500万円を超え1500万円までの人・・・・・負債総額の5分の1
1500万円を超え3000万円までの人・・・・300万円
3000万円を超え5000万円までの人・・・・負債総額の10分の1

②清算価値からの算出

財産がある場合、弁済総額が破産手続をした場合の配当額(清算価値)を下回らないことが必要となります。

③可処分所得額の2年分

自分の可処分所得額(収入の合計額から税金や最低生活費などを差引いた金額)の2年分の金額

 個人再生を利用できるか、利用できるとしたら小規模個人再生手続と給与所得者等再生手続のどちらの手続が有利かにつきましては、債務の総額や保有資産の程度、その他さまざまな要件によって異なりますので、弁護士にご相談ください。
任意整理
 多重債務を負った個人が債務整理をして、生活を立て直す方法として任意整理があります。任意整理は、裁判所を利用しないで、弁護士・司法書士などの専門家を間に入れて、債権者(カード会社、消費者金融等の借入先)と金利、遅延損害金の減額や返済期間の延長を交渉します。交渉に際しては、債権者へ取引履歴の開示を請求し、利息制限法超過の貸付があるかを調査します。利息制限法超過の貸付があれば利息制限法にもとづく引き直し計算をし、債務額を確定したうえで債権者と交渉を行います。過払い金が発生していれば返還の交渉を行います。

 債務者が無理なく返済していくためには、月々の収支を把握しておくことが大切です。弁護士にご相談いただければ、弁護士が債務者の収入をあらかじめお聞きして、毎月いくらなら返済できるかの状況を把握したうえで、債権者と月々の返済額、返済回数などを交渉します。

 任意整理は、比較的債務額が少なく継続して収入を得られる場合に財産を処分することなく返済の負担を軽くすることが可能です。

 任意整理は債務者個人でも手続きはできますが、債権者が交渉に応じてくれないこともあります。専門家である弁護士にご相談ください。
過払い金とは
 消費者金融等の貸金業者から借金をしている場合、利息制限法に定められた利率を超えた契約をしていることがあります。利息制限法による利率は、次のとおりです。
元本の額が10万円未満の場合……………………年20%
元本の額が10万円以上100万円未満の場合…年18%
元本の額が100万円以上の場合…………………年15%
 借入れをした人は貸金業者へ元本と利息を返済していますが、この返済金のうち利息について上記の利息制限法に定められた利率を超えて返済している場合があり、その結果貸金業者へお金を払い過ぎている状態のことを「過払い」と言います。

 利息制限法を超える利息は本来支払う必要がありませんので、過払いが生じている場合、元本の支払いに充てられ、さらに余分が生じれば貸金業者に対して過払い金の返還を求めることができます。

 過払いとなっているかを知るには、取引履歴をもとに法定金利で利息を計算し直す必要があります。
 長年にわたる借入れ返済の場合、契約書や取引履歴をどこにしまったか分からない、見当たらないとか、破棄して手元にない方もいらっしゃいます。このような場合でも、貸金業者に対して契約書や取引履歴の開示を請求できますので、過払いかどうかを確かめられます。
 過払いを調べる一般的な目安としては、貸金業者と5年以上取引があり、その間の金利が18%を超えている場合は過払いとなっている可能性が高いでしょう。なお、平成22年6月に完全施行された改正貸金業法にさきがけて大手貸金業者は金利を下げたため、施行後の取引については過払いが生じている可能性は低いでしょう。
 注意点として、現在は利息制限法内の利率で返済をしている方の場合、過払いはないと思われる方がいらっしゃいます。しかし、現在は利息制限法内の利率としても、当初の借入れ時から施行までの間は利息制限法を超過している場合があります。借入れの途中で利率の変更がなされている場合もありますので、この点も含めた調査が必要です。

 貸金業者への過払い金の請求は、返済中の方も完済された方もいずれも請求できます。ただし請求できる期間は、最後の取引から10年までとなります。返済中の方も完済された方も、なるべく早く弁護士へご相談されることをお勧めします。